脳梗塞や心筋梗塞は、脳や心臓に血液を送る血管が詰まることで起こる、命に関わる病気です。発症すると、命が助かっても、麻痺や心臓の機能低下などが残り、その後の生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

では、血管が詰まるのを防ぐには、どうすればよいのでしょうか。

大切なのは、血管の中で血の塊ができることや、血管の壁に脂質などがたまって血流を妨げることを防ぐという考え方です。心臓の中でできた血栓が脳へ流れていく場合もあれば、血管の壁にできた病変が原因となって血管が狭くなったり、詰まったりする場合もあります。原因が異なれば、必要な検査や治療、予防方法も変わります。

予防の基本は、日々の生活習慣を整えることだけではありません。高血圧や糖尿病、脂質異常症、不整脈などの危険因子を把握し、必要な治療を受けることも重要です。血管の異常がすでに見つかっている場合には、状態に応じて専門的な治療を検討することもあります。

1. 血管が詰まる原因は、一つではない

血栓は血管の中にできる「血の塊」

血栓とは、血液が固まってできる塊のことです。血管の中で血栓ができ、それが血流を妨げたり、血流に乗って別の場所へ移動して血管を塞いだりすると、重大な病気につながります。

たとえば、心房細動という不整脈があると、心臓の心房で血液の流れがよどみ、血栓ができやすくなることがあります。その血栓が血流に乗って脳の血管に到達し、血管を塞ぐと脳梗塞を起こす可能性があります。

同じ血栓でも、詰まる場所によって起こる病気は異なります。脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が詰まれば心筋梗塞につながります。

ここで重要なのは、血栓ができる場所と、血管が詰まる場所が必ずしも同じではないという点です。心臓でできた血栓が脳へ移動するように、離れた場所で起きた異常が、別の臓器に深刻な影響を与えることがあるのです。

アテロームは、血管の壁にたまる脂質などのかたまり

もう一つ重要なのが、動脈硬化に伴って血管の壁に形成される病変です。血管の内側に脂質などが蓄積してできるものを、一般にアテロームと呼びます。

アテロームが大きくなると、血管の内側が狭くなり、血液が流れにくくなります。また、病変の表面が傷ついたり破れたりすると、そこに血栓が形成され、血管が急に詰まることもあります。

頸動脈は、心臓から脳へ血液を送る重要な血管です。この部分に動脈硬化による病変ができると、脳への血流が妨げられたり、病変に関係する物質や血栓が脳の血管に流れ込んだりすることがあります。

つまり、血管が詰まる仕組みには、血栓そのものが問題となる場合と、血管の壁にできた病変が問題となる場合があります。実際には両者が関係することも多く、原因を見極めることが予防と治療の出発点になります。

2. 血栓やアテロームを防ぐには、原因を突き止めることが重要

血栓ができやすい人には、血栓を防ぐ治療が必要になる

心房細動などの不整脈がある人では、心臓の中に血栓ができ、それが脳梗塞の原因になることがあります。このような場合、医師は不整脈の状態や脳梗塞のリスクなどを評価し、必要に応じて抗凝固薬と呼ばれる薬を使います。抗凝固薬は、血液が固まって血栓ができるのを抑える薬です。

ただし、血栓を防ぐ薬は、誰もが飲めばよいというものではありません。薬によって出血のリスクが高まることもあるため、持病や年齢、腎機能、ほかの薬との関係などを考慮して使用する必要があります。

また、脳梗塞の原因は一つではありません。心房細動に由来する血栓が原因の場合と、動脈硬化による血管の病変が原因の場合では、適した治療が異なります。脳梗塞を起こした人では、発症時の治療だけでなく、原因を調べて再発を防ぐことが重要になります。

血管の壁に病変がある場合は、検査で状態を確かめる

頸動脈などにアテロームができている場合には、血管がどの程度狭くなっているか、病変がどのような状態にあるかを調べることが重要です。頸動脈エコー検査などを用いると、血管の壁や血流の状態を評価できます。

必要に応じて、血液検査で脂質や血糖の状態を調べたり、ほかの検査で動脈硬化の程度を確認したりします。こうした検査は、単に病気があるかどうかを確認するためだけのものではありません。何が血管を詰まらせる原因になっているのかを明らかにし、適切な再発予防策を選ぶために行われます。

血管の狭窄が強い場合などには、薬による治療に加えて、手術やカテーテルを使った治療が検討されることもあります。ただし、すべてのアテロームを手術で取り除くわけではありません。病変の場所や程度、症状、本人の全身状態などを踏まえて、治療の利益と危険性を比較する必要があります。

ここからわかるのは、血管を詰まらせないためには、ただ「血液をサラサラにする」ことだけを考えればよいわけではない、ということです。血栓ができる仕組みを抑えるべきなのか、動脈硬化を管理すべきなのか、それとも血管そのものへの治療が必要なのか。原因に合った対策を選ぶことが大切です。

3. 高血圧、糖尿病、脂質異常症を管理する

血管の状態は、日々の健康管理と深く関係している

血管の病気を防ぐうえで、特に注意したいのが高血圧、糖尿病、脂質異常症です。これらは動脈硬化の進行や脳卒中、心筋梗塞のリスクに関係します。

高血圧が続くと、血管の壁に負担がかかります。糖尿病では、血糖値が高い状態が続くことで血管が傷つきやすくなります。血液中の脂質の状態に問題がある場合も、動脈硬化の進行に関係します。

これらの異常は、初期には自覚症状がほとんどないことも珍しくありません。頭痛もなく、普通に生活できているからといって、血管が健康だとは限らないのです。

そのため、健康診断や定期受診で血圧、血糖値、脂質などを確認し、異常があれば医師に相談することが重要です。治療が必要な場合は、食事や運動などの生活改善と、必要に応じた薬物療法を組み合わせて管理します。

コレステロールは、単純に「低ければよい」とは言い切れない

コレステロールは動脈硬化と関係するため、血管の健康を考えるうえで重要な指標です。一方で、コレステロールは細胞膜やホルモンなどをつくるためにも必要な物質です。

そのため、コレステロールをめぐる問題は、単純に「多いから悪い」「少なければ少ないほどよい」と判断できるものではありません。どの種類の脂質がどの程度高いのか、血圧や糖尿病、喫煙歴などの危険因子があるか、過去に脳梗塞や心筋梗塞を起こしたことがあるかなどを踏まえて、治療の必要性を判断します。

特に、すでに動脈硬化性の病気を経験した人と、ほかに危険因子のない人とでは、目標とする数値や治療方針が異なることがあります。自己判断で薬を始めたり中止したりせず、自分の状態に合った管理方法を医師と相談することが大切です。

4. 「歩くこと」は、血管と身体を守る日常的な習慣

運動は、血管の健康を支える

血管の病気を防ぐには、薬や検査だけでなく、日々の生活習慣も重要です。その中でも、無理のない範囲で歩くことは、取り入れやすい運動習慣の一つです。

定期的に身体を動かすことは、血圧や血糖、体重などの管理に役立ち、心臓や血管の健康を支えます。また、歩くことは下肢の筋力やバランス能力を保つことにもつながり、高齢期の転倒予防や生活機能の維持という点でも意味があります。

大切なのは、必ずしも激しい運動をする必要はないということです。体力や持病に応じて、散歩や買い物、近所への外出など、続けられる活動を生活に取り入れることが現実的です。歩くことが難しい場合には、椅子に座ったまま行う運動など、身体の状態に合った方法を医療・介護の専門職と相談してもよいでしょう。

ただし、心臓や血管に病気がある人、運動すると胸痛や強い息切れが起きる人などは、運動の強さや方法について医師に相談してください。健康のための運動も、安全に続けられることが前提です。

楽しみながら身体を動かすことが、習慣を支える

運動を健康のための義務として考えると、長続きしないことがあります。一方、散歩の途中で季節の花を眺める、知人と話す、買い物を兼ねて外に出るなど、楽しみと結びつければ、生活の一部として続けやすくなります。

高齢期の健康管理では、数値を改善することだけが目標ではありません。自分の足で出かけ、人と会い、好きなことを楽しめる身体を保つことも大切です。歩く習慣は、血管だけでなく、筋力やバランス、日常生活の自立を支えるという意味でも価値があります。

5. 予防の基本は、生活習慣と医療を組み合わせること

食事、運動、禁煙、定期的な受診を続ける

脳卒中や心筋梗塞のリスクを下げるためには、日々の生活習慣を整えることが重要です。野菜や果物、魚などを含むバランスのよい食事を心がけ、塩分を取りすぎないようにすること、身体を動かす習慣を保つこと、喫煙している場合は禁煙に取り組むことなどが、血管の健康を支えます。

飲酒についても、量や頻度に注意が必要です。特に高血圧などがある場合は、飲酒習慣についても医師に相談するとよいでしょう。

ただし、特定の食品やサプリメントだけで脳卒中や心筋梗塞を防げるわけではありません。赤ワインやお茶、特定の栄養素などに注目する場合も、食品の効果を過大評価せず、全体的な食生活や生活習慣の中で考えることが大切です。予防のために飲酒を始めることも勧められません。

また、生活習慣を整えていても、血管の病気を完全に防げるわけではありません。定期的に健康状態を確認し、必要な治療を継続することが、生活習慣の改善と同じくらい重要です。

脳梗塞や心筋梗塞を起こした後は、再発予防が欠かせない

一度、脳梗塞や心筋梗塞を起こした人は、再発を防ぐための管理が重要になります。発症の原因を調べ、血圧や脂質、血糖などを管理するとともに、必要に応じて抗血小板薬や抗凝固薬などを使用します。どの薬が必要かは、病気の種類や発症原因によって異なります。

薬を飲んでいるから大丈夫と考えて生活習慣の管理をやめるのも、反対に、食事や運動を改善したから薬は必要ないと自己判断するのも適切ではありません。薬物療法と生活習慣の改善は、互いに補い合うものです。

再発予防では、定期受診を続け、薬の効果や副作用、身体の変化を確認することが大切です。薬の飲み忘れが多い、飲み続けることに不安がある、出血など気になる症状があるといった場合も、医師や薬剤師に相談してください。

6. 血管を守ることは、将来の自立した暮らしを守ること

脳や心臓の血管が詰まる病気は、発症した瞬間の命の危険だけでなく、その後の暮らしにも影響を及ぼします。脳梗塞によって手足の麻痺や言語障害が残れば、移動や食事、会話などに支援が必要になることがあります。心筋梗塞によって心臓の機能が低下すれば、息切れや疲れやすさが続き、活動範囲が狭くなる場合もあります。

だからこそ、血管の健康を守ることは、病気の予防にとどまりません。自分の足で歩くこと、家族や友人と話すこと、住み慣れた地域で生活を続けることなど、将来の生活の自由を守ることにもつながります。

血管を詰まらせないために大切なのは、血栓やアテロームができる原因を理解し、自分に必要な対策を選ぶことです。高血圧や糖尿病、脂質異常症、不整脈などを適切に管理し、無理のない運動やバランスのよい食事を続け、必要な検査や治療を受ける。こうした取り組みを積み重ねることが、脳卒中や心筋梗塞のリスクを減らす助けになります。

そして、どれほど予防に努めていても、突然の麻痺や言葉の異常、胸の強い痛み、息苦しさなどが現れた場合には、すぐに救急車を呼ぶことが重要です。予防と早期対応の両方を心がけることが、命と、その後の生活を守るための基本になります。